六本木で九州の空気を吸う話

高校の時の同級生が、私が福岡に行く前にぜひ連れて行きたいと言っていたお店に連れて行ってくれた。

六本木駅の交差点からすぐの雑居ビルに入っている串焼き屋さんだった。

女将さんを中心に、九州出身者の人財ネットワークがゆるく形成されているような感じで同じ空気を吸って育ってきた人々が集まっているような雰囲気があった。

女将さんは鹿児島出身で旦那さんが福岡出身。

旦那さんは博多で同じように串焼きのお店を切り盛りしている、というかなりアクティブなご夫婦である。

 

同級生は、大手の某損保会社からこれまた大手の某携帯キャリアに出向しているというキワモノの経歴を持っている。

以前より、彼を含めW大の臨時講師件コンサルファーム所属の博士持ちや私と同じ大学卒のみかか系コンサルの同窓生4人で飲んだりしていた。

今回誘ってくれた彼と私はG検定持ちで、会えば必ず機械学習の話で盛り上がる。

 

彼は、理工系の学部を出て営業職で会社に入り、九州に赴任した経験もあり、また大学時代には同県出身者だけが入れる学生寮にいたため、人脈はかなりあるようだ。

なんでも、女将さんの息子さんと大学で同級生だったの事。

 

どちらかと言うと、私は雑談苦手で、業務の話でいけば自分一人でなんでもしたい、人の力を借りる=その人に迷惑をかける、という考えの人間なので、人との繋がりは広く浅く組み立てられない人間だ。

なので、彼のような人を見ると羨ましく思うのだが、その彼の人財レパートリーに入っていることが嬉しくもあったりする。

 

その日も、近況の話から始まり、昨今のAIバブルっぷりに危機感を覚える話をし、どうしたら鹿児島の経済発展に貢献できるかといったいつものおしゃべりコースを楽しんでいた。

カウンター席の真ん中あたりに並んで飲んでいたのだが、ちらちらと隣の席から人工知能のワードが聞こえてくるのが気になっていた頃、不意にそのグループから話しかけられた。

聞くと建築系の会社に勤める方々で、年は60前くらいだそうだ。

人工知能とは一見遠い業界にいるが、そういう業界で如何にその技術を活かすかという話題はホットなんだという。

声をかけてくださったのは、3名いたうちの1名が私たちと同じく鹿児島出身らしく、やはりこちらの話もチラチラ聞こえて気にしていたらしい。

 

そのあとは、ローカルトークをしたり、今度私が福岡に行くと言う話で色々助言を頂いたり、女将さんを交えて奥の席に同じ大学出身の誰々さんがいる、といった話でひとしきり盛り上がった。

ほんの少しの共通点があるだけで何故これほど繋がりを感じられるのか、と思った。

 

自分はもしかしたら、そういうほんの小さな共通点に価値を見出さないままここまで来てしまったのかも知れない。

もう少しこのお店に早く出会うことができたなら或いはもっと多くの人と出会えていたのではないかと考えるとこの空間から、東京から離れるというのを非常に寂しいと感じた。

福岡に行ったらできるだけ早く旦那さんのお店に行こうと思う。