人の夢を聞く話

人が働くモチベーションはなんだろな、というのは組織論を学んだことのある人なら間違いなく通る問いの一つだ。

マズローやハーズバーグなど昔の人たちの考え方から学ぶことでパワハラなど恐怖による支配がなぜ短期的な効果しかもたらさず持続性がないかを体系的に知ることができる。

それでもパワハラが無くならないのは、そもそもそう言った理論を学んだことがないか、思考回路がちょっと違っているか、その人自身が精神的に弱った状況におかれていて長期的な判断が出来ないかのどれかなのかな、と思う。

 

長期的で持続可能な効果を出すためには、メンバーのコミットメントを得ることが第一である。

私は、前々職で新規サービスの企画ディレクション兼開発リーダー兼技術営業という何でも屋的ロールに置かれていた。

専任は私だけで、ほかの方々は受託開発業務との兼務という形だった。

受託開発は金のなる木で新規サービスは問題児という扱いなので、当然兼務メンバーのコミットメントは受託開発に注がれてしまい得ることは難しかった。

明日の飯のタネが重要であることは明白で、これは個人の資質の話ではなく立場からくる違いである。

私の立場には新規サービス以外にコミットメントを注ぐための逃げ場が無かったというだけに過ぎない。

そんな中でコミットメントを得るために唯一効果的だったのは、その人の夢を聞くという行為だった。

その人が何を成したいかという、生きることの価値とでもいうのだろうか。

 

自分の思い描く夢が、当該活動の延長上にある。という確信を持っている時、その人のポテンシャルが十分に発揮されている状態になるのだと感じた。

そのため、マネジメントする人間には、その人の夢を聞き出すヒアリング力と業務のその先にその人の夢が来るように想像力を発揮する手助けをするサポート力が必要となる。

 

私は唯一の専任メンバーとしてほぼ全てのメンバーと対話することになり、人とは何か、人生で何を成したいのか、そんな話を事業開発そっちのけで夜遅くまで繰り広げることになった。

そんな中で思ったのが、マネジメントする人間こそが自分の夢を持っていなければいけないということだ。

夢を持たない、またはあやふやな夢しか持たない人間に、他人の夢の実現をサポートするのは難しい。

 

あなたの夢は何ですか、という話をすると

アーリーリタイアとか都内に一軒家とか、そう言うのは色々出てくるだろうが、そう言うものはよくよく深掘りしていくと目的ではなく手段であったりする。

真の目的であるところの夢、を語ると言うのは非常に恥ずかしい行為だ。

私も夢を面と向かって語るのは恥ずかしい。

しかし、まずは自分から語ることが重要であり、その夢も十分な思考の繰り返しにより生み出されていることが求められるのだと思う。

 

今のところ、私の中では、その人が生きて死ぬことに価値を持たせることができている状態を夢が実現している状態だと定義している。

その夢と、現実の業務とを結ぶ線を見つけることでコミットメントを得、モチベーションを高めることができる。

この考え方には一つ重大な弱点があって、自分の生に価値を持たせる必要を感じないとか価値を持たせたくない。と言う人からコミットメントを得ることはほぼ不可能だと断じてしまう点にある。

かと言って、他人に夢を持つことを強いるのは傲慢であると思っている。

考え方のバージョンアップではなくパラダイムシフトが必要だが、なかなか殻を破れないでいる。